『バグダードのフランケンシュタイン』アフマド・サアダーウィー

140字以上書く機会、というのも作ろうと思い、そうだブログを作ろう、と思って昨年12月に作ったはいいが、書くことが思いつかなかったので放置していた。

 

とりあえずブログ1本目だから何にしよう、と気張るのも面倒だったので何か感想を書きたいような本を読み終わったら書くか、とさらに放置して年を越した。

最近全然本が読めないのと一冊が読みかけでも構わず次の本に手を出すので読みかけが大量にあるという癖が災いして2月になった。

 

ということで何とか読み終わったのが「バグダードフランケンシュタイン」。

この現代イラクの小説は、日常的に爆破テロが起こり、気が付いたら隣にいた人が肉片になっているかもしれないバグダードの日常に、ある奇怪な、人知を超えた殺人者『名無しさん』が現れるところから始まる。

 

『名無しさん』と言われるとなんか匿名掲示板かよ。と思わなくもないが、この男*1は爆破テロで粉々になった足や腕を誰彼構わずつなぎ合わせて作られ、さらに爆破テロの犠牲になった男の魂が入った、つぎはぎ人間である。

彼は己のパーツとなった人々の無念を晴らすために、その殺人者を片っ端から殺して回る。なるほどざっくり言えばフランケンシュタインに違いない。

 

その男を作ったのは古物商ハーディという別にマッドサイエンティストでもなんでもない男である。

彼は、ただあるときからとり付かれたように死体を集め(材料はいくらでも転がっている)数多の、無名の、もはや身元もわからなくなった手や鼻や耳や足から一体の死体を作り上げた。

そこにうっかり魂が入り込んでしまったのは彼の想定外だったが、そこには「大量の顔のない死に顔を与えようという試み」がある。

ハーディはかつて仕事仲間の死体を引き取りにいき「そこから一人分もっていってください」といわれた。爆破テロの被害者たちの体のあちこちが、もはや復元不可能なほどにまぜこぜになって積み上げられた死体置き場で。

 

今日はどこそこが爆発して何人死んだ、とカウントされニュースで発表されていく死への抗議、みたいな意図があったとは明確に描写されてはいないが、ともかくもハーディはそのあとから一体の死体を作り上げる試みを始めた。

「真の意味での最初のイラク国民」名無しさんはそうして生まれた。

 

とはいえ長々と古物商ハーディのことを書いたけれども彼の物語ではなく、バグダードに生きる人々のささいな縄張り争いであるとか、老婆の戦争で死んだ息子への執着であるとか、雑誌社に抜擢された若い青年の恋愛模様であるとか、そういう日常と暴力を隣り合わせにおいて、というよりはそれがその時点のバグダードの日常として、物語は進む。

 

読んでて全編とても面白かったのだが唯一気になるのは街にただ一人の?エジプト人が関西弁でしゃべることかな…いやなんで関西弁?エジプト訛りは関西弁に似ているのか?なんか適当に地元っ子と同じ言葉をしゃべってない感じを出したかったのか?

と毎回なんとなく気が散っていたり。

 

*1:一人称俺だし、とりあえず自認として男であるらしい