献血の話をしよう

最近、というか完全にここ2年程だが、割とよく献血ルームに行く。

といっても、だいたい3回に1回くらいは「今日はお休みですね(採れませんよ)」と言われるだろうか。献血とは実は狭き門である。

以下公式リンクを見るとわかるが

献血をご遠慮いただく場合

献血基準

 

海外渡航歴とか、輸血歴とかで生涯献血できない人もいるし、その辺の条件がクリアされたとしても、血色素量(ヘモグロビン値)でアウト、とか当日、何故か脈拍が高く何度か測りなおしてもらっても全然下がらずアウト、とかいろいろある。

もちろん、病気レベルではなく、大体「日常生活に問題があるわけではないんですけど、献血って余った血をいただくものなので」と言われる。

それにそもそも注射が苦手という人もいるだろう。

ですので、できない人、普通によくあるので気にすることないです。私ができるときにやっときます。何なら私も割と頻繁にできないです。

 

で、「今日はお休みね!」とマイルドに言ってもらえるのはいいが採血まで献血ルームの人の手を煩わせたのに献血できない……というのは少々へこむし、そのために献血から遠ざかっていた部分もある。

 

が、ここにきてCOVID-19の流行である。

流行り病で人間が外出しなくなったとしても、事故や病気がなくなるわけでもなく手術をしないわけでもない。血液が足りません、と言われたら、では「とりあえず元気で、過去に献血できた履歴もある」人間が血を献じにまいりましょうぞ、となった。そんなもんですきっかけなんて。

が、400ml全血は一番基準が厳しい。最近は200mlはほとんど実施していない。採血までしてがっかりするのはちょっと嫌だ。ということで、成分献血予約をすることにした。

成分献血は基準が一番ゆるい。一度血液を採ってから血漿をろ過して赤血球部分は体内に戻すため、体への負担も少ない。次回献血できるまでの期間も短い。

が、1回あたり70分くらいかかるので時間を確保していかないといけないし、そうすると休みが土日の勤め人としては土日に、となるが都市部の土日の成分献血枠はすぐ埋まる。

そもそも成分用の専用ベッドの台数が限られているらしいので一日にできる人数が全血よりかなり少ないのだろう。何週間も先の土日に予約を入れ、それまで多少心がけて鉄分の多そうな食事をする。

 

当日になって受付をするとすぐスポドリを渡される。とにかく全力で水分を取れ、といわれる。言われるがままに飲む。

問診やいくつかのチェックの後に検査採血となるが、とにかくこれまで「基準値に足りない」と言われた回数が多すぎて検査の結果が出てくるまでドキドキしているので、OKです、となるとめちゃくちゃホッとする。

なんでわざわざそんなスリルを味わっているのかとほんの少し思う。

 

献血できます、となったら成分献血用のベッドに寝て、採血となるが、その際とにかく体を温められる(特に冬場は)。身体が冷えれば血の出が悪くなり時間がかかるし、もちろん身体にもよくないのだろう。手にカイロ、腹に湯たんぽ、身体にブランケット、みたいな手厚さである。

体調や手先のしびれなどないかもこまめに確認してくれる。

血を取って、戻して、のサイクルで袋に薄黄色い血漿がたまっていくのがわかる。治りかけた傷からしみてくるアレです。なるほど、アレを集めているのか。と思う。

(ちなみに成分献血には血漿だけを集めるのと血小板も集めるのがある。私は「いい血小板ですね!」といわれて血小板献血をおすすめされたことがある。いい血小板とは……)

 

終わりです、といわれて受付をする部屋に戻る。

そこでもとにかく水分をとってください、最低このくらいは休んで行ってください。と言われるので、献血が終わるともらえるアイスを食べて適当に自販機の飲み物を飲んで、ぼんやり周りの人を見る。

カップルや友人同士で来ている人、職員さんに「今回〇(←すごい数字)回目ですねー!」と言われている献血ガチ勢。

ガタイのいい男性は「そりゃー貴方は貧血ではじかれる心配ないだろうな!(偏見)」と思うし、ダメでしたー、と帰っていく人は「その気持ちわかるぜ……」と思う。

 

しかし、この部屋にいる様々な属性の十数人の人にとって、別に献血ルームでもらえるお菓子だとか、ノベルティだとか、漫画が読めるとか、が「わざわざ時間を取ってルームに出向き、病気でもない自分の身体に針を刺し、最大400mlの血液を抜き取る」に替わる代償というわけではないだろう。ルームの人にとにかく感謝と気遣いをされるので自己肯定感上がっておすすめ!みたいなツイートを見たこともあるし、金のかからない時間つぶし、という側面もあるだろうが。そのために血を抜くかは?って話である。

「これが善意でなくて何なのか」と思う。窓際でスマホをいじっているおじさんも、てんでに漫画を読んでいるカップルも、まぎれもなく善意の人である。

それを言うなら私のこの「ないと言うならあげに行こう」というのも、あえて名付けるとしたら善意なのだろう。

 

それをもって人間素晴らしい!などと言う気はなく、ただ、この場にいる人たちは普段は他所で何をしているにしろ、誰か必要としている人のために血を提供しにきたという善意によって共通しているんだな、とぼんやりと思うのが、私の献血の楽しみなのかもしれない。